観劇
もう一週間経ってしまいましたが、先週の土曜日、神奈川芸術劇場(KAAT)にて上演の「夢の劇」(構成・演出:白井晃)を見てきました。「夢の劇」はストリンドベリが1901年に執筆した戯曲。
神・インドラの娘アグネスが地上に降り人々の不満や嘆きを見聞きする、という話し。登場人物達は皆苦しみ、嘆いていて、時間場所を越えてその苦悶が語られる。まるで悪夢のような人生を生きている。それらは個々の場面として語られるのですが、今回の舞台では場面転換がうまく、一連の話しでありながら、世界が急に変わる、まさに長い夢を見ているように感じました。
充実した時間を楽しみました。白井晃さんのKAAT芸術監督就任第1作目ともあって、力の入った、見応えのある劇でした。舞台装置、演出、俳優どれもよかったです。とりとめもないですが、考えたこと、感想を以下に。
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○舞台、舞台装置
・観客席は舞台を三方から囲うように設けられ、これが観客をはじめの地上の人々をみる神の視点を持つ存在から、最後には人々の苦悩を生み出す大衆へと変えてしまうように感じ、感心した。
・場面転換がよかった。特に最初のアグネスが地上に降りるシーン、吊された屋根が徐々に上がり、ダンサーは重力に逆らうように踊り、本当に地面に落ちていった。
○音楽
・音楽が生演奏なのも良かった。劇の内容とは一見反するような柔らかく奏でられる音楽は、却って人間のどうしようもない人生を表しているようでぴったりだった。
○役者・ダンサー
・役者が色々なところか現れる演出も楽しめた。最初、すぐ近くから白井さんが登場してびっくり。
・早見あかりは上手かった。あの存在感はドラマより舞台向きかと思う。舞台だと独特な声も演技も良い方向に作用していたと思う。
・山崎一さん、長塚圭史さんはさすが。いるだけで目を引く存在感は舞台俳優だなぁ、と思った。
・森山開次さんの踊りを見て、あー、踊るってすごい表現なんだなぁと実感。これも今回の観劇で良かったと思うことの一つ。
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それにしても、原作の時代から100年経っても人間は変わらない(「人間て哀れだわ!」)。多分ずっと変わらないんだろうな。にんげんだもの。一方で、インドラとその娘・アグネスという登場人物は、ニーチェのツァラトゥストゥラと同じ感じがする(ストリンドベリとニーチェは交流があったようだし)。なんとなく、19世紀末のころの雰囲気がそこから漂ってくる。このテーマが、十分に現代社会をも風刺するものでありながら、古典的な感じもするところが良い効果を生んでいるのではないかと、ふと思った次第。
そして、今年からKAATの芸術監督となった白井晃さんが、これからも面白い企画をやってくれることを期待しています!