先日行きました大山(伊勢原・神奈川)の建物がおもしろかったので、2回に分けて書いてみようと思います。
大山は修験、天狗信仰、神仏習合と多様な信仰が重なり合った信仰の山で、明治の神仏分離によってその色合いはほぼ失われましたが、同じ山中に阿夫利神社と再興した大山寺が建つことや天狗にまつわる石や石碑などにその名残を感じます。
その中でも、見応えのあった建物についていくつか。
大山ケーブル駅の脇、女坂を上っていくと雨降山大山寺の前不動につきます。前不動堂は床張りなのに縁が無いのがちょと変わった建物。素木で、組物は出組、獅子鼻と支輪板に彫刻があるが全体としては質素な感じ。この堂の右を向くと2階建ての来迎院があります。唐破風の車寄玄関は水引虹梁、二重虹梁、蟇股に笈型、木鼻近世~近代的な絵用が立派。中央間の両脇間には1階、2階ともに虹梁が掛かる点が面白いです。そして、この附近で一番の見どころは不動堂の左脇に建つ龍神堂(八大堂)。方一間の小堂で、案内板には寛永18年(1641)の再建、細部意匠等からの判定と思われるますが『神奈川県近世社寺緊急調査報告』では19世紀前半とされる、山内では一番古い建物です。装飾は木鼻程度ですが、朱塗りの躯体と深い軒が印象的です。現在縁側が見世棚のように正面のみに付いていますが、もとは両側面にも廻っていた痕跡が残ります。このことと、神仏分離前は二重瀧に建っていたとのことから、おそらく、瀧の脇、裏側からは見られない位置に建っていたのだろうと思われます。
この龍神堂の階段を上がっていくと、大山寺の本堂に着きます。本堂は明治の神仏分離後に再建されたものですが、江戸時代の寺社建築の有り方と、その技術を継承、発展させていたことが分かり、見応え十分な建物です。
(②につづく)